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2005.10.13

林檎型の"オセロの駒"

 なかなか時間が取れないので、個々の製品評価については後日へ分けようと思います。本日未明の発表を受けて感じたことを。

アップル、ビデオiPodと新型iMacを発表--動画配信に進出(CNET)

 先日のiPod nanoの発表時、白というイメージが強かったiPodシリーズに新しく黒のカラーを追加した時は、その精悍で美しいカラーバリエーション追加をただ喜んでいたものでした。


ipod_video01
今回新しく発表されたVideo対応のiPodにも用意されています。




 ところが、昨晩のAppleの発表を眺めると、私には白で埋め尽くされていたオセロの盤が黒くひっくり返されていく様が浮かぶのです。これは単なる新製品の発表ではありません。「これまで(表向き)強く否定していたことへの転換」、これに尽きます。
#そういう意味でカラーバリエーションの白・黒は示唆に富んでいるように思えます

 「MacがIntelチップ採用へ」、思えばこの時はあまりにも大きな歴史的転換に文字通り突っ伏しましたが(苦笑)、それ以降のAppleの発表を並べてみます。


MacがIntelチップ採用(2005/06)

 
PowerPCの優位性を喧伝しつづけてきた中での大転換




MightyMouse発表(2005/08)

 
1ボタンマウスにこだわりつづけたAppleが初めて出した多ボタンマウス




iPod nano(2005/09)

 
薄さ・小ささについての優先度が低かったAppleから出された薄型軽量iPod




 長くMacユーザであった方であればあるほど、これらから受けたインパクトは大きかったことでしょう。「Appleはそういうポリシーなんだ」と長い時間とJobsの御威光によって刷り込まれてきたようなものですからね(苦笑)。

今回そこに加わったのが…


───Video対応iPod───

 これは昨年の記事です

「動画対応は間違い」とジョブズ氏、iPodは写真対応に

「われわれの競争相手がやっていることを見ると、動画の方へと動いている。だが、動画は大きすぎ、重すぎる上に携帯プレーヤーの画面は小さい。動画は、これから進む方向としては間違っていると思う。正しいのは写真だ。(デジタル写真の増加により)皆がコンテンツを持ち、著作権を有している」とジョブズ氏はサンノゼで開かれた発表会で語った。

 この言葉には説得力がありました。「~ながら」ができる音楽と違って、画面を見つづけなければならない動画を携帯プレーヤで見ることはたしかに日常にそぐわないように思えます。しかし、AppleはiPodで動画に対応しました。

 私の予想は、iPodで動画を見ることそのものが今回の目的ではないというものです。もちろん、ユーザがどれだけiPodで動画コンテンツを見るかということについては今後の結果を待たねばならないと思いますが、Appleとしてはむしろ、MacやWindowsでの動画配信の土壌を作りたいというのが根底にあるのではないでしょうか。


───iMacにつけたリモコン───
 Macではなぜテレビが見られるようになっていないのか、という質問に対して、これも昨年Steve Jobsはこう答えています。

Mac生誕20周年:スティーブ・ジョブズ氏が語る、Macの「誕生」と「現在」

――競合会社の戦略について、どう思いますか? たとえばテレビとWindows Media PCを結びつける戦略などは。

ジョブズ 以前から、われわれの考えはその点に関して、とてもはっきりしている。テレビとパーソナルコンピュータが一つになるとは考えていない。テレビは、頭を休めるために見るもので、コンピュータは頭を使うときに利用する。それに付け加えることは? まあ、時にはその2つを結びつけたいときもある。たとえば、ムービーを作ったら、それをDVDに焼いて、DVDプレーヤーにかければいい。そうすれば、コンピュータから離れたテレビで見ることができる。

 しかし、「さあ、テレビとコンピュータをくっつけてしまおう!」なんて宣伝していた製品のほとんどが失敗している。全部失敗だと言ってもいい。テレビにマウスをつなげて操作したいなんて、だれが考えるんだろう。

 問題はこういうことだ。コンピュータを使いたいときには、自分との距離は30cmくらい。それが、テレビになると、3mは離れて使いたい。まったく種類の違う生き物だよ。


 今回のiMacはたしかにテレビ視聴に対応したわけではありません。しかし、リモコンとそのコントロールソフト(Front Row)はまさしく、「3mは離れて使いたい」としていた距離で使うスタイルに合致したものです。私が感じた衝撃はここなんですよね。クリエイティブ、パーソナルというスタイルを貫いていたMacが(iMacだけとはいえ)そういった顔を持つことになるのですから。


imac_remote01
#そう考えると当初から相応しいデザインでしたね…




 Macを中心とした「デジタルハブ」構想は、パーソナルな机の上からリビングへ出て行くことになりそうです。ふと思ったのですが、JobsはMac(もしくはiTunes)を経由しないコンテンツだからテレビを外しているのではないでしょうか。今回、アメリカのABCの番組は放送後にコンテンツとして購入することができるようになりました。iTunesの最後のピースは「ストリーミングで流されてくるテレビ放送」なのではと考えるのはいささか飛躍しすぎでしょうか…。


 それにしても、ここまでたった4ヶ月…。今後のAppleは古参Macユーザの予想を越えた手を打ってくるように思えてなりません。

 私の胸のうちは期待と畏れに満ちています…。

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Comments

はじめまして。
古くからのapple userとしては最近の怒濤の攻勢についていけません。
今回の動画対応ですが、imacにisightが搭載されたのと同時という点に深さを感じます。 ある意味 これで誰もがvideo ジャーナリストができるわけです。imacの前で今日の新聞をもちながらコメントするだけで番組になってしまいます。videoo pot casting 見たいなのがすぐに立ち上がるとおもいますし、ただ単に30秒のCMだけをコレクションすることもあるかもしれません。個人的にはプロモーションvideo配信とか、カラオケの配信とかいろいろビジネスモデルが思いついちゃいます。  また、これはquick timeを普及させるトロイの木馬でもありますね.     もはやitunesの会社ということなんだと思います。  

Posted by: oliza | 2005.10.13 at 05:54 PM

>oliza様
基調講演を見ると、iMacもiPodも全てが一つの線でつながっている感がありましたね。

iPodの動画対応はAppleとしてもそれがメインではないようで、ユーザ側からの使い方の提案を待っているように感じられます。

少し前から、QuickTimeとiTunesはWindowsではセットでしかダウンロードできなくなっています。Appleは押さえたかったところを制覇できてきたようですね。

Posted by: Solid Inspiration | 2005.10.14 at 12:40 PM

この次のエントリーも含めて、相変わらず深い所でMacを見てらっしゃるなぁと感心してしまいました。

確かに今回、同時にiTunesとQuickTimeがVersionUpしましたよね。そこからも推測できますが、今のAppleはパソコンの機会そのものではなくて「コンテンツをどう料理するか」という部分に興味の焦点が絞られている気がします。

確かにOSの壁は厚いけれど、Apple社というメーカーが覇権を握っていくんだったら、コンテンツを押さえていく事に腐心するしかないですよね。

こちらのエントリーで、改めて確信しました。

Posted by: kikka | 2005.10.15 at 01:04 AM

>kikka様
お読みいただきありがとうございます。

iTunes+iPodでOSの垣根を越えて以来、AppleのQuickTime技術の影響力がもの凄く広がりましたね。これまでもQuickTimeはMacもWindowsも同時開発していましたが、単なるPlayerベースとしてどれだけインストールされているかということだけが話題に上っていた記憶があります。

ところが、iTunesとQuickTimeの組み合わせでインストールベースをさらに増やすことにより、意識しなくてもApple主導のコンテンツ配信が可能になってきています。今回の動画配信はH.264の普及速度を加速させるでしょう。

日本ではこれまで動画配信についてはWindowsMediaPlayerの独壇場で、バージョンアップもバグフィックスも放置されたままのMacでは観られないコンテンツばかりでした。

今回のiTMSからの番組配信でその呪縛からも解放してくれることを期待します。

Posted by: Solid Inspiration | 2005.10.15 at 12:16 PM

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