セクハラの対価
今から5年も前の話です。書いても、もう問題ないでしょうか…。
結婚する現在の彼女とつきあい始めて半年ほど経ったある晩のこと。
"助けて"と夜中に彼女が泣きながら電話をかけてきました。
タクシーの車内から電話をしてきているようでしたが、混乱している様子だったので、とにかく私の家まで向かわせました。
当時、彼女は小さな広告系の会社勤務、私は進学塾講師だったのですが、二人とも転職を考えており、彼女は先日、別の広告系の会社から内定をもらったばかり。
その会社の社長は、面接時から彼女を高く評価してくれていた方らしく、入社後の業務等について話があるからということで指定されたお店に行ったそうです。
いきなりバーでお酒を飲み始めている時点で、彼女も内心不審には思っていたようですが、内定をもらったばかりの立場、仕方なくお酒につきあいました。
夜も遅くなり、"じゃぁ次の店"と連れて行かれたところが案の定ホテル…。わっと泣きながら走って逃げ、タクシーに飛び乗ってきたとのこと。
話を聞いて怒りで体が震えましたが、とりあえず泣きじゃくる彼女を落ち着かせてウチに泊め、翌朝、怯えきってしまった彼女の代わりに私が相手の会社に電話を。
電話に出た社長に、"昨晩の○○の代理の者ですが…"と伝えると相手は態度を一変させて平謝り。しかし酒に酔っていたためと言い訳を繰り返す姿に段々腹が立ち、"された側の気持ちが分かっているのか!"と一喝。翌日に都内のホテルのラウンジで話し合いを持つことになりました。
#こう書くとなんか偉そうですが、当時はいっぱいいっぱいでした…
翌日、待ち合わせの場所に現れたのは50代の社長と、なんと相手の連れてきた弁護士。こっちはたかだか20代後半の一介の塾講師です。社会的立場でも経験でも圧倒的に不利。
社長は、酒に酔っていたためほとんど覚えていない、ただ精神的に傷つけてしまったことは謝る、当社でこのまま働いていただき、きちんと面倒を見ることで誠意を見せさせてほしい、と言ってきました。
こちらとしては、彼女はもうあなたのいる会社でなど働きたくないと言っている、そちらから内定をいただいたことで既に前の会社も辞めてしまった、これから彼女はまた就職活動を再開しなければならない、その分の損害はどう面倒を見るのか、と相手に伝えました。
…ハッキリ言ってかみ合っていませんよね…。
#最初から酒につきあわせている時点で下心全開じゃないですか
会社に行きたくないというのは彼女自身の意見なのですが、後半のお金の部分は私が加えた部分です。当時、事前に自分なりに調べた限りでは、今回のように特に実害がなく、しかもお互いにお酒を飲んでいたとなると、慰謝料と言ってもあるかないか程度の額なんだとか。
#多くても5万くらいじゃないでしょうか
でも、それじゃぁハッキリ言って相手の謝り得じゃないですか。
ただでさえ就職難の時代、また一から就職活動をする苦労は想像に難くありません。そう考えると多少なりとも生活資金になるものがあった方がいいと思いましたし、着地点は結局、お金の話になるだろうと踏んでいました。
そこから先は弁護士さんとの話になりました。幸いなことにその弁護士の方は、その社長とゴルフで知り合っただけの関係で、ニュートラルな立場で間に立ってくれることになりました。弁護士さん曰く、残念ながら法的な慰謝料という形で考えるとなるとこちらが覚悟している通り、大した金額が算定されるわけではない。それは理解しておいてほしい。ただ、念のためそちらが考えている金額はいくらになるのか、とのこと。
私が伝えた額ですか?
予定していた給料の一ヶ月分と答えました。突然職を失う、解雇予告手当が一ヶ月分なのでそれに準じたいと。いや、もちろん彼女の気持ちを考えたら金額に天井なんてないとは思うのですが、現実的な金額とのバランスを素人の僕なりに考えた結果がそれでした。単純な金額より根拠がありそうでしたし…。美人局(つつもたせ)と思われたくはなかったので、努めて冷静に話をしたつもりではありましたが。
正直、その額に対する反応は社長側は"高いっ"という感じではありました。弁護士さんもこちらに理解を示しつつ、難しいかなという顔はしていました。
その日の話し合いはそこまで。後は弁護士さんを通じてやり取りをするということで、社長は逃げるように退散していきました。
後日、弁護士さんを通じてその金額を払うという旨の連絡がありましたが、彼女は結局断りました。かわりにこの手紙を読んでほしいと自分がしたためた手紙を送ったようです。
#問題が起きた時、男性は問題解決に向かい、女性は感情を共有したがるという説の通りなのかも…
学んだことはいっぱいあります。女性がまだまだ弱い立場にあるということを再認識しましたし、セクハラなんて言葉がこれだけ浸透しても、社会的制裁なんて大したことがないんだなぁとも思いました。
何よりも、酒の席のことでも責任を持てないような人間にはならないようにと心に刻みましたしね(笑)。
今、テレビで法律の番組が花盛りですが、正直なところこのケースではいくらが正しいのかというのは聞いてみたいです。でも、もう過去のことですが。
だって…
その社長の会社、1年後に
天罰…
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Comments
ゆるせん・・・と怒りをあらわにしながら読んでいたら、流石、Solidさん、しっかり彼氏のお役目をお果たしになられた。
しかし彼女、その会社に就職しないで良かったですね。
いやな事があったのは事実ですが、セクハラが就職前にあった事、彼に助けてもらった事、そして倒産により無職にならずに済んだ事。大けがしないで良かった!
実際テレビなんかで見ていると、数ヶ月~何年の過程で金額が決まるような事が多いらしいです。
Posted by: コングBA | 2004.08.29 09:21 PM
>コングBA様
コメントありがとうございます。
今振り返ってみると、当時のケースはまだ幸いな方だったのかもしれません。実害がなかったことが一番ですが、相手があっさりと認めて謝ってきたこと・間に冷静な第三者として弁護士が立っていたことなど、話し合いが進めやすい環境でした。
これで相手が突っぱねていたら、こちらが逆上してかえって立場を悪くしていた可能性もあります。
#若かったですしね(苦笑)
彼女には忘れてほしいですが、僕自身の中ではいい勉強となりました。
Posted by: Solid Inspiration | 2004.08.29 10:07 PM